Claude APIの新バージョン2026-10-21 temperature廃止と移行の手順

Anthropicが米国時間10月21日、Claude APIの新しいバージョン「2026-10-21」を公開しました。開発者向けの公式アカウントは、2023年以来、初めての公式バージョンだとしています。
目立つ変更は、新しい版を指定したリクエストで、AIの答えのばらつきを調整する「temperature」など3つの設定が使えなくなることです。一方で、これまでの版「2023-06-01」は非推奨ではないとされています。今回の版の追加だけを理由に、すぐ切り替える必要はありません。ただ、公式のSDKを新しいメジャー版に上げると、送る版が自動で2026-10-21に変わり、SDK自体の変更も一緒に入ってきます。SDKを更新する予定のある会社ほど、先に確かめておくことがあります。
2023年以来の公式バージョン。古い2023-06-01も使い続けられる
Claude APIを使うプログラムは、リクエストのたびに「どの版の決まりで話すか」を日付で指定しています。anthropic-version: 2023-06-01 のような書き方です。Anthropicは、同じ版の中では既存の入力と出力の項目を保つとしています。新しい項目や返す値が足されたり、エラーになる条件が変わったりすることはありますが、項目そのものを消すような変更は、新しい版を選んだときにだけ入ります。
今回、その版が約3年ぶりに更新されました。2026-10-21を指定すると新しい決まりになり、2023-06-01を指定し続ければ、これまでの項目のまま使えます。Anthropicは今後、バージョンをもっと頻繁に出すとしています。理由は、これまでのプログラムがそのままでは動かなくなる変更(破壊的変更)に、新しいモデルがそれを必要とする前に対応できるようにするためだ、と説明しています。
SDK(各プログラミング言語からAPIを呼ぶための公式の部品)を使っている場合、どの版で話すかはSDKのメジャー版で決まります。今回、各言語のSDKも一斉に新しいメジャー版になり、既定で2026-10-21を送るようになりました。公式のSDKの既定の動きでは、メジャー版を上げない限り、送る版は変わりません。
新しい版で得られるのは、新機能より次への備え
先に断っておくと、バージョンの説明の変更一覧に、新しい機能の追加は書かれていません。中心は、設定の削除や項目の置き換えといった、これまでのプログラムに関わる変更です。Anthropicは、新しい機能は既存の版にも足していく方針で、この数か月で増えた機能も2023-06-01のまま使えます。
それでも、移ることで得られるものはあります。
- これからのモデルに乗りやすくなる。 Anthropicは開発者向けの公式アカウントで、新しいモデルが必要とする前に破壊的変更に対応できるよう、版を出すと説明しています。早めに移っておけば、新しいモデルが出たときに、版の切り替えと重なって慌てずに済むと思います
- 資格情報の扱いが1本にまとまる(SDKも新しいメジャー版に上げる場合)。 新しいSDKでは、APIキーと認証トークンが同じヘッダーで送られ、1つのクライアントに持たせる資格情報も1つになります。どの鍵で動いているかが分かりやすくなります
- 書き方の誤りに、実行する前に気づきやすくなる(SDKも新しいメジャー版に上げる場合)。 メッセージの型が、ユーザー、AI、システムの役割ごとに分かれ、役割ごとに入れられるものが型で決まりました。型の検査を使っていれば、たとえばTypeScriptでシステムのメッセージに画像を入れるような書き方は、実行する前にエラーとして見つかります
- 管理用のAPIで、既定のワークスペースのIDも取れる。 これまで空(null)だった既定のワークスペースに、実際のIDが入り、キーの範囲も分かりやすく表されるようになります
言い換えると、今回の版は、古くなった設定や曖昧だった書き方を片づけて、次の段階に進むための整理です。以下の章で挙げる「使えなくなること」も、その整理の中身だと考えると分かりやすいと思います。
使えなくなる設定と、書類・引用・管理用のAPIの変更
いちばん大きいのは、temperatureなど3つの設定の廃止
2026-10-21では、Messages APIから temperature、top_p、top_k の3つの設定がなくなりました。送ると、既定値と同じ値でも400エラー(リクエストが不正という応答)になります。トークンを数えるAPIや、まとめて処理するバッチのリクエストにも同じ決まりがかかります。
3つとも、AIが次の言葉を選ぶときの「ばらつき」を調整する設定です。temperatureを下げると、毎回似た答えになりやすい。top_pとtop_kは、選ぶ候補を確率の高いものに絞ります。
影響の出方は、モデルによって違います。移行ガイドによると、Claude 4.7以降のモデルは、もともと既定値しか受け付けません。リクエストから3つの設定を外しても、答えの選び方は変わりません(外さずに2026-10-21で送ると、エラーになります)。影響が出るのは、Claude Sonnet 4.6のように値を変えられるモデルで、temperatureを下げて答えを安定させていた場合です。2026-10-21に移ると、その効果はなくなり、代わりになる設定もありません。どうしても残したいリクエストは、2023-06-01のまま使えます。
書類と引用の扱いと、管理用のAPIも変わる
ほかに、Messages APIで2つの使い方がエラーになります。
- AIの返答の側(assistantのメッセージ)に、書類(documentブロック)を直接入れる。書類はユーザーの側に入れる
- ユーザーの側のテキストに、引用の情報(citations)を付けて送る。AIが前に返した答えに付いている引用を、そのまま送り返すのは問題ない
当てはまりやすいのは、会話の履歴を自前で組み立てている仕組みです。気づかずに当てはまっていることがあるので、確かめておく価値はあります。
組織を管理するためのAdmin APIと、Claude Enterpriseの利用状況を取るAnalytics APIでは、一部の項目が置き換わります。利用者ごとの集計の actor.email は actor.email_address に、といった名前の変更が中心ですが、APIキーの一覧の workspace_id は少し違います。この項目はなくなり、代わりに scope という項目でキーの範囲を表します。特定のワークスペースに結びついたキーは scope.workspace_id にそのIDが入り、これまで空(null)だった既定のワークスペースにも、実際のIDが入るようになります。すべてのワークスペースで使えるキーには、ワークスペースのIDそのものがありません。社内の管理画面や、コストの集計をこのAPIで作っている会社は、読み方の見直しが要ります。
SDKを上げると、APIの外でも変わることがある
新しいSDKには、APIの版とは関係のない変更も入っています。リリースノートと移行ガイドから、影響の大きそうなものを抜き出します。全部ではないので、使っている言語のSDKについては、移行ガイドで一つずつ確かめてください。
| 変更 | 影響 |
|---|---|
標準のクライアントが、APIキーを X-Api-Key ではなく Authorization: Bearer で送るようになった | 途中に中継やプロキシを置き、X-Api-Key を読んだり書き換えたりしている構成は、設定の変更が要る(SDKを使わずに直接呼んでいるプログラムは、どちらのヘッダーでも使える) |
| 1つのクライアントに、APIキーと認証トークンを同時に持たせられなくなった | 両方を渡しているコードはエラーになる |
| 古いText Completions APIを削除(TypeScript、Go、Java、Ruby、CLI) | Messages APIより前の古い書き方が残っているコードは、書き換えが要る |
| メッセージの型を、役割(ユーザー、AI、システム)ごとに分けた | 型を使って書いているコードは、直しが要ることがある |
Goのモジュールのパスに /v2 が付いた | Goで使っている場合は、読み込む場所の書き換えが要る |
| ライセンスがMITからApache 2.0に変わった | コードの変更は不要。使っている部品のライセンスを管理している会社は、台帳の更新が要る |
ほかにも、TypeScriptとRubyのツールランナーでの、クライアント側の会話の圧縮(コンパクション)の削除や、ant CLIでAPIキーをコマンドの引数で渡すオプションの削除などがあります。
2026-10-21を既定で送る最初のメジャー版は、Python 2.0.0、TypeScript 1.0.0、C# 13.0.0、Go 2.0.0、Java 3.0.0、PHP 1.0.0、Ruby 2.0.0、ant CLI 2.0.0です。10月22日時点の最新版は、それぞれもう1段上がっています(Pythonなら2.1.0)。
SDKの更新と修正は、同時に出す
移行ガイドの手順は、次の3段階です。
- 2026-10-21に切り替える。 SDKを使っているなら、上の新しいメジャー版以降に上げる。SDKを使わずに直接呼んでいるなら、
anthropic-versionヘッダーを2026-10-21にする - そのままでは動かなくなる箇所を直す。 temperatureなどの3つの設定を外す、書類と引用の入れ方を確かめる、SDK側の変更に合わせる
- 2026-10-21で試してから、公開する
公式は、1と2を別々に出さず、一緒に公開するよう求めています。
Claude Codeを使っている開発者なら、Claude Codeの2.1.307で追加された /claude-api api-version で、Claude APIを使うコードの移行を手伝わせられます。どこを直したかは、人が差分を見て確かめることになります。
Amazon Bedrockを使っている会社は、ここで手順が分かれます。Bedrockでは、2026-10-21はClaude 4.7以降のモデルでしか使えません。Bedrock経由で古いモデルを呼んでいる場合は、今のSDKのまま使うか、先にモデルを4.7以降に切り替えます。Claude API本体のほか、AWS上のClaude Platform、Microsoft Foundry、Google Cloudでは、2026-10-21が使えます。
最後に 急がなくていいが、次のモデルに備えて計画は立てておく
ここまでが公式の資料で確かめた内容です。ここからは筆者の考えです。
急いで移る必要はないと思います。ただ、Anthropicが「新しいモデルが必要とする前に」バージョンを出すと書いている点は、読み流さないほうがいいでしょう。今後のモデルや機能が新しい版を前提にする可能性があり、そうなってから慌てて移行するより、余裕のあるうちに試しておくほうが安全です。
確かめる順番は、次の4つのどれに当たるかで決めると分かりやすいと思います。temperatureなどを既定値以外で使っている。APIキーを中継する仕組みを置いている。Admin APIやAnalytics APIで管理画面や集計を作っている。Bedrockで4.6以前のモデルを使っている。どれかに当たるなら、移行の前に手当てが要ります。
開発を外に頼んでいる会社なら、開発会社に次のことを聞いてみてください。
- Anthropic SDKのどのバージョンを使っているか。 上の最初のメジャー版より前の公式SDKを既定のまま使っているなら、今は2023-06-01で話している
- temperatureなどの設定を使っているか。使っているなら、どのモデルか。 移行で答えの安定性が変わるかどうかが分かる
- APIキーを中継する仕組みを置いているか。 SDKの更新で設定変更が要るかが分かる
- 2026-10-21に移る予定はあるか。移らないなら、その理由は何か
この4つが記録として残っていれば、少なくとも現状は把握できている、と言えると思います。移行するときは、移行の前と後で同じ入力を何回か流し、分類の結果や出力の形、守らせたい決まりが変わっていないか、答えのばらつきが広がっていないかを比べるのが確実です。
自社で開発している会社は、まずコードの中で temperature、top_p、top_k と anthropic-version を検索するところからです。どこにも出てこず、モデルも4.7以降なら、3つの設定の手直しは要りません。ただし、書類と引用の入れ方、管理用のAPI、SDK側の変更は別に確かめ、試してから公開する必要があります。