Google Antigravityとは Geminiで使えるコーディングエージェント

AIにコードを書かせるツールの話を、このブログでは何度か書いてきました。Claude Codeの始め方、CLAUDE.mdとAGENTS.mdの使い分け、昨日のMEMORY.mdの整理。ただ、どれもAnthropicかOpenAIの話でした。
「うちはGoogleなんだけど」。そう思われた方もいると思います。
Googleにも同じ種類のツールがあります。Google Antigravityです。名前は7月のGemini Sparkの記事で一度出しました。「Sparkはこのハーネスの上で動いている」と1行だけ書いて、そのまま説明せずに来てしまったので、今回はそこを埋めます。
入口の値段がゼロ
いちばん大きな違いから書きます。料金ページの個人向けプランは、こうなっています。
$0/month サブスクリプションなしでAntigravityを体験できます
無料です。 ただし条件が3つあります。FAQにこう書かれています(訳です)。
Google Antigravityは現在、承認された地域の個人のGoogleアカウントで利用できます。WorkspaceのGoogleアカウントで問題が出る場合は、@gmail.com のアドレスをお試しください。
18歳未満は使えません。 対象地域の一覧も同じページにあり、日本は入っています。
先に言っておきます。会社のGoogle Workspaceアカウントでは、そのまま入れないことがあります。 公式が個人のGmailを試すよう案内しているくらいなので、想定された挙動で、仕事で使うつもりの方ほど最初につまずきやすいところです。なお組織として導入する経路は別にあって、Google Cloud経由のGemini Enterprise Agent Platformになります。
Google AI ProとUltraの契約者は、この無料枠より緩い制限で使えます。ここがGoogleらしいところで、すでに払っているサブスクがそのまま効く。Geminiを使うために契約している方なら、追加の出費なしで開発用のエージェントが1つ増える計算になります。
利用量の制限はプランのページにありますが、具体的な回数は書かれていません。制限はエージェントが行った作業量と相関するため、プロンプトごとに変わるからだと説明されています。「何回まで」で見積もれないので、ここは使って体感するしかありません。
入口は4つある。IDEを開かない選択肢もある
Antigravityという名前は、ひとつのアプリを指していません。公式サイトが挙げているのは4つです。
| 名前 | 何か |
|---|---|
| Antigravity 2.0 | 複数のエージェントを並行管理する司令塔のアプリ |
| Antigravity CLI | ターミナルで動かす軽量版 |
| Antigravity SDK | Pythonでエージェントを組むための開発キット |
| Antigravity IDE | エディタ機能まで入った統合開発環境 |
Claude CodeやCodexを普段からターミナルで利用している方なら、CLIが一番近い入口です。逆に、ターミナルに苦手意識がある方は2.0かIDEから入れます。ターミナルの記事で書いたような黒い画面を開かずに済むのは、非エンジニアには大きい違いです。
対応OSはmacOS、Windows、Linuxの3つ。入門ドキュメントによれば、macOSはAppleのセキュリティ更新が続いているバージョン、通常は最新と2つ前までが条件です。
始め方で1点だけ挙げます。エージェントを起動するとき、そのまま作業するか、Gitのworktreeを切って隔離するかを選べます。いきなり本体を触らせずに済むので、最初の1回はこちらを選んでください。
モデルは自分で選ぶ。Claudeも入っている
ここが予想外でした。AntigravityはGeminiだけのツールではありません。モデルのドキュメントに一覧があります。
| モデル | 無料 / AI Pro / AI Ultra | Enterprise |
|---|---|---|
| Gemini 3.8 / 3.7 / 3.6 Flash | 使える | 使える |
| Gemini 3.1 Pro | 使える | 使える |
| Claude Sonnet 4.6 | 使える | 使えない |
| Claude Opus 4.6 | 使える | 使えない |
| GPT-OSS-120b | 使える | 使えない |
無料プランでClaudeが選べます。 Googleの製品でAnthropicのモデルを動かす。妙な話に聞こえますが、そう書いてありますし、実際に使えます。
ただし世代に注意が必要です。ここで選べるClaudeは4.6世代です。AnthropicからはFable 5.1やOpus 5といった5系がすでに出ていますが、Antigravityの選択肢には入っていません。
画像だけは選べません。図やモックアップが必要になったとき、AntigravityはNano Banana 2を内部で呼びます。この点は後半でもう一度触れます。
モデルの指標では負ける。速さと値段では勝つ
正直なところを書きます。Antigravityで選べるモデルは、汎用の指標でClaudeやGPTの上位モデルに届いていません。
第三者のArtificial Analysisが出している指標を並べます(2026年9月6日時点。各モデルとも掲載されている上位の思考設定です)。
| モデル | 知能指数 | 評価1件の費用 | 速度(トークン/秒) |
|---|---|---|---|
| Claude Fable 5.1 | 57 | $6.12 | 70 |
| GPT-6 Astra | 55 | $2.57 | 73 |
| Claude Opus 5 | 54 | $4.21 | 60 |
| Gemini 3.8 Flash | 47 | $0.74 | 311 |
| Gemini 3.1 Pro Preview | 37 | $0.34 | 118 |
費用の列は製品の利用料ではありません。この指標を測るための評価タスク1件あたりにかかったAPI料金です。Antigravityで使うぶんには、無料枠の中なら発生しません。Fable 5.1の57は、独立した検証を待つ推定値として掲載されています。
知能では10ポイント前後の差があります。一方で速度は4倍以上、費用は3分の1から8分の1。同じ土俵のツールではない、という見方のほうが近いと思います。
ただし、この表が測っているのはAPIで呼んだときのモデル単体で、しかも汎用の知能です。コーディングエージェントの出来は、モデルに加えてツールの使わせ方や指示の組み立てで変わります。順位ではなく、桁の違いを見るための表として使ってください。
表を見て気づかれたかもしれません。Proと名の付くモデルのほうが、スコアが低い。 Geminiは高速版のFlashが3.8まで来ているのに、上位版のProは3.1で止まっています。9月1日の告知によれば、Flashは6週間で3回更新されたとのこと。名前の格と、この指標での順番が一致していません。Antigravity内部での実行条件までは公開されていないので同じ差が出るとは限りませんが、迷ったらまずFlashの最新版から、というのが私たちの見立てです。
ツールをまたがずに済む
では、モデルの指標で劣るツールをなぜ使うのか。
先に断っておくと、これから挙げる機能はAntigravityの専売ではありません。画像生成はCodexにもあり、ブラウザ操作はClaude Codeにもあります。違うのは、別のツールを用意せずに製品の中でつながっていることです。
1つ目。画像が作れる。 これは私たちにとって切実な話です。以前Claude Codeでは写真やイラストが作れないと書き、その後Claude CodeからCodexを呼んで画像を作るという回り道もしました。このブログのヒーロー画像は、いまもその方法で作っています。Antigravityは最初から内蔵しています。 UIのモックアップ、構成図、ページに置く画像。これをツールをまたがずに作れるのは、地味ですが手数が変わります。
2つ目。やった作業が成果物として残る。 Artifactsという仕組みがあって、エージェントは実装計画、コードの差分、構成図、そしてブラウザ操作の録画を残します。公式の説明はこうです(訳です)。
エージェントがより自律的になり、長時間にわたって複雑なタスクを実行するようになると、Artifactsは非同期の協業を可能にします。個々のツール呼び出しを逐一その場で監視する必要はなく、要所で概要レベルの成果物をレビューします。
画面に張り付かなくてよくするための設計です。任せている間は離席しておいて、後から計画と録画を見て判断できます。エージェントに仕事を渡すときの一番の悩みは「ちゃんとやったか分からない」ですが、計画と差分と録画が残っていれば、後から確かめられます。
3つ目。ブラウザを操作できる。 ブラウザのドキュメントによれば、専用のサブエージェントがChromeを開いて読み、実際に操作します。作った画面をその場で動かして確認できる、ということです。Chromeのプロファイルは本人のものと分けられ、URLの許可リストと拒否リストも用意されています。個人のログイン情報と混ざらない作りは、個人情報の線引きを気にする立場からは安心材料です。
Google経済圏なら、まず無料枠で試す
すでにClaude CodeかCodexを常用している方は、乗り換える理由は薄いと思います。 慣れたツールを捨てるコストのほうが、たいてい高くつきます。
判断が変わるのは、次のような方です。 個人のGoogleアカウントでAI ProかUltraを契約していて、Geminiを日常的に使っている方です。この場合、契約もアカウントも増えません。すでに払っているものの枠が、そのまま開発用に伸びます。
無料で試せること自体はAntigravityだけの特徴ではありません。OpenAIの案内によれば、CodexもChatGPTの無料プランに入っています。違いは値段より、どの経済圏でまとまるかです。
もうひとつ、画像や画面確認まで含めて1本で完結させたい方にも向きます。私たちのように複数のツールを行き来していると、受け渡しの手数が積み上がります。
試すときの順番も書いておきます。モデルはGemini 3.8 Flashから。 物足りなければClaude Opus 4.6に切り替える。そして最初の仕事は、New Worktree Modeで、消えても困らないものから。バイブコーディングの記事でも書きましたが、いきなり本番のコードを触らせる必要はありません。
ツールが3社から出そろったことで、選択肢は「使うか使わないか」ではなくなりました。手元にある契約で、いくらから始められるか。 そこから考えるほうが、現実的だと思います。