OpenAI 新モデル「Sol/Terra/Luna」 中小企業はいつ・いくらで使えるのか

2026年6月26日、OpenAIが新しい大規模モデル「GPT-5.6」シリーズを発表しました(公式ブログ)。1モデルではなく、フラグシップの Sol、バランス型の Terra、高速・低コストの Luna という3つのモデルで構成される、これまでとは少し違う発表のしかたです。
ただし発表時点では、すぐに誰でも触れるわけではありませんでした。初期は米政府承認パートナーへの限定プレビューから始まり、一般提供は数週間先の見込みとされていました。その後、7月9日にAPIで一般公開されています(次の章で詳しく)。
この記事では、Sol/Terra/Lunaという3モデル構成の意味、価格と能力、そして「結局、日本の中小企業がいつ・いくらで使えるのか」を見ていきます。あわせて、最新モデルが、まず米政府との調整を経た限定パートナーから先に出る構造が続いた場合、日本を含む他国の立場がどうなっていくのかにも触れます。
2026年9月24日時点の答え もう使えて、発表時より安い
2026年9月24日更新: この記事は発表翌日の6月27日に書いたもので、「いつ・いくらで」の答えがその後大きく変わりました。先に、いまの状況をまとめます。この章より後ろは、発表時点の内容を残したうえで、古くなった箇所に注記を入れています。
- APIでは7月9日に一般公開されました(OpenAIの変更履歴)。国ごとの提供リストは別になく、ChatGPTとAPIそれぞれの対応国に従います(ヘルプ)。日本でも使えます
- ChatGPTでも使えます。有料プランでは、ふだんの応答から深く考えるモードまでをSolが担い、FreeとGoの既定モデルはLunaになりました。TerraとLunaは通常の会話では選べず、プランに応じてWorkとCodex、それにAPIで使います(ヘルプ)
- 3モデルとも値下げされました。7月30日にLunaが8割、Terraが2割安くなり、8月21日にはSolも値下げされています。Solの今の価格はキャンペーン価格で、少なくとも11月21日までとされています(料金ページ)。Lunaの値下げは別の記事でも扱いました
- 後継のGPT-6 SolとLunaが9月22日に出ました。API価格はGPT-6 Solが入力2ドル・出力10ドル、GPT-6 Lunaが0.10ドル・0.50ドルで、GPT-5.6の同じティアよりさらに安くなっています。詳しくはGPT-6 SolとLunaの記事で
これから新しく使い始めるなら、GPT-5.6ではなくGPT-6のSolとLunaから検討するのが自然だと思います。
GPT-5.6が出た 何が新しいのか
OpenAIが2026年6月26日に発表したGPT-5.6シリーズは、新しいフラグシップ Sol、中段の Terra、軽量の Luna という3モデル構成で登場しました。OpenAI公式の説明では、SolはGPT-5.5に対して「a step function better」(段階的に1段階上)と位置づけられています。
ポイントは3つです。
- 1つの「最新モデル」ではなく、用途・速度・コストに応じて選べる3ティアで提供される
- 発表時点では限定プレビューで、米政府承認パートナー向けに先行提供された(後述)
- 一般提供は数週間後の見込みとされ、実際には7月9日にAPIで一般公開された
これまでのOpenAIのモデル命名は、GPT-4、GPT-4o、GPT-4 Turbo、GPT-5、GPT-5.5と、世代と派生がだいぶ混在していました。GPT-5.6シリーズの命名は、その整理整頓の方向に踏み出したと読める内容です。
太陽・地球・月の3モデル 数字は世代、名前は能力ティア
GPT-5.6シリーズの3モデルは、太陽系の天体から名前を取っています。
- Sol(太陽): フラグシップ。最も高性能で、複雑な推論や高度な業務に向く
- Terra(地球): バランス型。GPT-5.5並みの性能を2倍安価に
- Luna(月): 高速・低コスト型。日常的な処理を低コストで回す
OpenAIの公式説明によると、命名の考え方はこうです。数字(5.6)が世代を、Sol/Terra/Lunaが能力ティアを表す。そしてティアごとに、それぞれ独自のペースで進化していく設計。つまり「GPT-5.6 Sol」の次が「GPT-5.7 Sol」になる一方で、Terra や Luna は別のタイミングで世代が上がっていく可能性がある、ということです。
これは中小企業の使い手側に立つと、わかりやすい変化です。「最新のフラグシップしか選べない」状態から、「フラグシップは Sol、業務日常は Terra、量で処理する作業は Luna」のように、用途で選び分けやすくなります。
能力と価格 段差ではなく階段になった
公式発表で示された3モデルの価格と、値下げ後の今の価格は次のとおりです(100万トークンあたり、長い入力を除く標準の価格)。
| モデル | 発表時の入力 | 発表時の出力 | 今の入力(9月24日) | 今の出力(9月24日) |
|---|---|---|---|---|
| Sol | $5 | $30 | $4 | $20 |
| Terra | $2.50 | $15 | $2 | $12 |
| Luna | $1 | $6 | $0.20 | $1.20 |
今の価格はOpenAIの料金ページによります。Solはキャンペーン価格です。
為替を仮に1ドル160円で置くと、今の価格でTerraの100万トークンは入力320円・出力1,920円、Lunaは入力32円・出力192円程度です(発表時の価格では、Terraが入力400円・出力2,400円、Lunaが入力160円・出力960円でした)。中小企業の日常業務(問い合わせ対応、社内文書の整形、議事録の要約など)を回す土俵としては、Terra/Lunaは現実的な水準にあります。
性能面では、Sol が新しい「max reasoning effort」(最大限の推論時間)と「ultra mode」(サブエージェントを並行で走らせて複雑な作業を加速する仕組み)を備えるほか、コマンドライン操作のベンチマーク Terminal-Bench 2.1 で当時のSOTA(最高スコア)を更新したとされます。コーディング、生命科学、サイバーセキュリティといった分野で、エージェント的な振る舞いの精度が上がっているのが特徴です。
Terraは「GPT-5.5並みの性能を半額で出せるモデル」と位置づけられています。型落ちの位置ではなく、新世代の中段として並んでいる、と捉えるのが正確です。
なぜ「限定プレビュー」スタートなのか 米政府との調整と限定パートナー先行
GPT-5.6シリーズは、リリース当初から誰でも触れるわけではありません。OpenAIは「米政府との継続的な関与の一環として、政府の要請により、参加情報が政府と共有された少数の信頼できるパートナー」を対象に、限定プレビューを始めた、と説明しています。
この背景には、サイバーセキュリティや生命科学などのハイリスク領域での慎重な展開、それから OpenAI 自身が今回「過去最高水準のセーフティスタック」を組んだという文脈があります。Solは、ハイリスクな依頼への対応強化や、繰り返しの悪用への防御を厚くした上で公開されました。
「数週間後に Sol/Terra/Luna を一般提供する予定」とOpenAIは説明していましたが、その数週間の間、最新モデルに先に触れられたのは、米政府との調整を経た限定の信頼できるパートナーだけでした(一般公開は7月9日)。
米国一強が続いた場合、日本はどう動くか
ここに、日本を含む他国の中小企業から見て、見過ごせない論点があります。最新AIが、まず米政府との調整を経た限定パートナーからしか触れないという構造です。
GPT-5.6に限った話ではありません。OpenAIに限った話でもありません。最新のフラグシップモデルは、米政府との調整を経た限定パートナーへの先行提供から始まり、その後で一般提供を通じて他国にも開かれていく。この数週間から数ヶ月のタイムラグは、最新AIの恩恵を受けるタイミングそのものに、国による差を作ります。
この状態が続くと、日本を含む米国外の国は、AI分野で常に米国の後ろを走る位置に固定されるリスクがあります。米国産のモデルに匹敵する自国モデルを作れない限り、最新の能力を持ったAIに触れるのは米国より遅れ、業務での実装や活用も後追いになる。これはAI産業の競争力そのものに関わる構造の話です。
なお、OpenAI自身も今回の限定プレビューについて「この種の政府アクセスプロセスが長期的なデフォルトになるべきではない」とコメントしており、最良のツールがグローバルパートナーや開発者に届きにくくなる懸念を示しています。提供側の問題意識も、ここに重なっているということです。
国内ではSakana AI が公開したFuguのように、「複数のフロンティアAIを束ねる司令塔」というアプローチで対抗を試みる動きがあります。海外でも、フランスのMistralや中国のQwenなど、米国一強に対抗する各国の動きはあります。この構造に対する備えは、もう数年前から始まっています。
中小企業として今からやれるのは、特定の1社・1国のAIだけに業務を寄せ切らない設計です。ChatGPTだけ、Claudeだけ、Geminiだけ、ではなく、複数のAIに業務を分散させ、最新モデルが出たときに素早くアクセスできる経路(API契約、ChatGPT/Claude/Geminiの並行利用)を持っておく。これは依存リスクを下げると同時に、リリースのタイムラグを少しでも縮める動きでもあります。
中小企業はいつ・いくらで触れるのか
実利の話に戻します。日本の中小企業がGPT-5.6シリーズを触れるのはいつか、いくらか。
時期については、OpenAIが「数週間後の一般提供」と説明しています。早ければ7月中に一般提供へ進む可能性はありますが、OpenAIは具体的な一般提供日も、日本での提供時期もまだ発表していません。プレビュー中はAPIとCodexでのみ利用可能で、ChatGPTでは利用不可とされています。(9月24日追記: 実際には7月9日にAPIで一般公開され、ChatGPTでも使えるようになりました。冒頭の「9月24日時点の答え」を参照してください)
費用については、API直接利用なら上の価格表に沿った従量課金です。中小企業の日常業務をTerra/Lunaで回す前提で考えると、100万トークン(およそ日本語70〜80万文字)を入力で使ってもTerraなら数百円、Lunaなら数百円未満から動かせる試算になります。コストを抑えたいなら Luna から触り始めて、必要に応じて Terra や Sol に切り替える、という運用が現実的です。
公開時点では、ChatGPTのどのプランで、どのモデルが、どの利用枠で使えるかは、一般提供時の正式発表待ちでした。(9月24日追記: 有料プランはSol、FreeとGoはLunaが既定になりました。詳しくは冒頭の章を参照してください)
最後に、触る前提として一言。GPT-5.6 SolはTerminal-Bench 2.1でSOTA、max reasoning effort、ultra modeと、能力の高さが目を引きます。一方でOpenAIのSystem Cardはサイバー領域での高い能力(High capability)を認めており、エージェント的なコーディング作業で意図を超えた操作の例も報告されています。高性能化は便利さだけでなく、誤操作時の影響も大きくします。APIやCodexで使う場合は、権限・実行環境・承認フローを絞って試すのが前提です。
最後に 階段モデルが示すこれからの選定軸
GPT-5.6シリーズの登場で改めて見えてくるのは、業界全体が「階段モデル」の方向に揃ってきている、ということです。Claudeの Opus/Sonnet/Haiku、Geminiの Pro/Flash、そしてChatGPTの Sol/Terra/Luna。いずれも、フラグシップ・バランス・軽量の3段構成です。
これからのモデル選定は、「どの会社の最新フラグシップを使うか」より、「どの会社の、どのティアを、どの業務に当てるか」のほうが重要になります。中小企業の現場では、Solで凄いことをやらせるよりも、Terra や Luna で日常業務を着実に回すほうが、効果と費用のバランスでは合うことが多いはずです。
そして、最新モデルが、まず米政府との調整を経た限定パートナーから先に出る構造は、当面続きそうです。日本の中小企業として現実的にやれるのは、最新を追い続けるよりも、複数のAIへアクセスできる経路を持ち、自分たちの業務に合うティアを継続的に選び直していくことです。GPT-5.6や後継のGPT-6も含めて、今手元で使えるChatGPT、Claude、Geminiで業務を磨いていく。その積み重ねが、リリースのタイムラグに左右されにくい体質を、自社の中に作っていきます。