「うちのデータ、学習に使われてない?」に答える AIサービス別オプトアウト早見表

「AIに社内資料を投げたいけど、うちのデータが学習に使われないか心配」。中小企業のAI導入相談で、最も頻繁に出る不安のひとつです。
答えを先に言うと、サービスとプランで決まっていて、しかも仕様は毎年動いています。ChatGPTなら?と一括で答えるのは正しくありません。この記事は、主要4サービスの現在のデフォルトとオプトアウト方法を、公式ヘルプを1つずつ確認してまとめたものです。
まず「学習に使われる」を3層に分ける
同じ「使われる」でも、実は次元が3つあります。これを分けないと話が混乱します。
- モデル訓練に使う: あなたの会話が将来のモデルの学習データに入る。いちばん気にする話はここ
- その場で応答を生成する: 質問に答えるためにその瞬間だけ処理する。これは避けようがない
- 悪用検知のため一定期間保持する: 学習に使わなくても、規約違反や不正利用のチェックのため短期間ログに残る。多くのサービスで共通の運用
「オプトアウトした=一切残らない」ではなく、「モデル訓練には使われないが、監査目的で一定期間の保持はある」というのが実態です。
主要4サービスの現在の扱い
各社の公式ヘルプを2026年8月時点で確認した内容です。
| サービス | 個人プラン | 法人プラン | API |
|---|---|---|---|
| ChatGPT | 個人向けサービスでは訓練に使われる場合あり。Data Controlsで「Improve the model for everyone」をオフに | Business / Enterpriseはデフォルトで訓練に使わない | デフォルトで訓練に使わない |
| Claude | デフォルトで訓練に使わない。Model Improvementオン、フィードバック送信、違反検知でフラグされた場合などは例外 | Claude for Work / API はデフォルトで訓練に使わない(商用規約で Anthropic may not train models on Customer Content と明記)。フィードバック時は例外 | 同左 |
| Gemini アプリ | Gemini Apps Activityがオンなら改善・訓練・人手レビュー対象。オフにすると将来チャットは訓練対象外(応答処理・安全保護のため72時間は保存) | Workspace版は顧客の許可なく訓練・ファインチューニングに使わない | Vertex AI / Google Cloud 側の契約・設定に従う |
| Copilot | 個人向けCopilotは訓練利用を設定でオプトアウト可。M365 Personal / Family内のCopilot(Word・Excel・Outlookなどに統合されたもの)は訓練対象外 | M365 Copilot(Entra IDでサインインする法人版)は訓練対象外と明記 | Azure / Microsoft 商用契約側の条件に従う |
パターンが見えてきます。法人プラン(BusinessやEnterprise)を選べば、訓練利用は基本的にオフ。個人プランは各社ばらつきがあり、Claudeはデフォルト・オフ、ChatGPTとGeminiは個人版でデフォルト・オン、Copilotは個人向け単体はオン(オプトアウト可)だがM365 Personal / Family内の統合Copilotは対象外、という具合です。
個人プランでオプトアウトする手順(3分で終わる)
「今日から止めたい」場合の最短手順です。
ChatGPT: プロフィールアイコン → Settings → Data Controls → Improve the model for everyone をオフ。Webでも同期されます(公式ヘルプ)。
Claude: デフォルトでオフなので、通常は何もしなくてよい。ただし例外があり、Privacy Settingsで Model Improvement を明示的にオンにした会話、フィードバック(👍👎)を送った会話、規約違反の疑いでフラグされた会話は利用対象になります(公式ヘルプ)。
Gemini アプリ: 「Gemini Apps Activity(Gemini アプリ アクティビティ)」をオフに(Google アカウントの My Activity から)。オフにすると将来のチャットは訓練対象外になりますが、応答処理・フィードバック処理・安全保護のため72時間は保存されます。あわせて過去チャットのパーソナライズなども無効になります(公式ヘルプ)。
Copilot(個人版): Copilot設定 → プライバシー → モデル訓練へのデータ利用をオフ。あわせて広告のパーソナライズも別項目でオフにできます(公式ヘルプ)。なお、Microsoft 365 Personal / Family契約下でWord・Excel・Outlookなどに統合されたCopilot会話は、そもそも訓練対象外の扱いです。
中小企業のいちばん確実な選択 「毎回設定」より「プランで選ぶ」
社員が10人、20人と増えた瞬間、「全員が正しくオプトアウト設定しているか」を管理し続けるのは非現実的です。加えて、退職者のアカウント、無料枠で試している社員、といった穴も出てきます。
業務利用は最初から法人プランに寄せるのが、いちばん確実です。ChatGPT Business / Claude for Work / Google Workspace with Gemini / M365 Copilot、いずれも基本的に訓練利用の対象外(Google Workspaceは規約上「顧客の許可なく生成AIモデルの訓練・ファインチューニングにCustomer Dataを使わない」と明記されています)。個人が設定する項目が減る=事故が減るという発想です。
私たちの導入支援でも、最初にお勧めするのはこの切替です。月額が上がるように見えても、社員が個人アカウントで試すことで生まれるリスク(シャドーAIの記事参照)を考えると、割に合うケースがほとんどです。
見落とされがちな落とし穴 3つ
オプトアウト設定をしても、これらは残ります。
- 悪用検知のためのログ保持: 訓練利用とは別に、多くのサービスで30日〜数か月の保持が規約に含まれます。ChatGPTのTemporary Chatは30日、Geminiの一時チャットは72時間などサービスごとに違うので、超機密は「そもそもAIに入れない」が最終ラインです
- フィードバック機能(👍👎): 応答に評価を付ける操作をすると、その会話全体が保持・利用対象になる仕様のサービスがあります。ChatGPT・Claude・Gemini はいずれも、訓練をオプトアウトしていてもフィードバック送信が例外扱いになり得ると公式ヘルプに明記(Claudeはフィードバック関連会話を最大5年保持と説明)。Copilotは訓練とは別に製品改善・安全・コンプライアンス目的での利用が残る立て付けなので同列ではありませんが、👍👎は普通の会話とは扱いが違う、というのは共通です
- 社員個人アカウント問題: 会社が法人プランを契約しても、便利さで個人アカウントを併用する社員が出ます。会社の管理外で入力された内容は、その個人プランの設定に従います。契約と運用ルールはセットで整えないと意味がありません
今日確認する3ステップ
- ステップ1: 自社が使っているAIサービスとプランを一覧化する(有料契約しているものと、社員が個人アカウントで使っているものの両方)
- ステップ2: 法人プラン契約分は設定を確認、個人契約分は上のオプトアウト手順を配布
- ステップ3: 業務データを日常的にAIに入れる部署があるなら、法人プランへの移行を検討する
私たちのAI導入支援の現場では、この3ステップだけで多くのグレーゾーンが解消します。逆に、この整理をしないまま「AIは危ないから禁止」に振ってしまう会社は、その裏でシャドーAI化が進んでいるケースが目立ちます。
まとめ: オプトアウトは技術より運用の話
設定項目自体は3分で終わります。難しいのは、「全社員がその状態を維持している」を保証する運用です。だからこそ、個人がスイッチを触るより、契約するプランで決めるほうが確実という結論になります。
契約書の類は数年に一度しか読み直しませんが、AIの学習利用ポリシーは毎年のように更新されます。この記事も2026年8月時点の情報なので、契約更新のタイミングで各社の最新ヘルプに一度当たり直すことをお願いします。まずは今日、自社の一覧化から始めてみてください。