Gemini 3.7 Flash登場 コーディング性能を強化、APIは年内半額

3週間前にGemini 3.6 Flashの記事を書きました。性能が上がって値段も下がった、いい更新だと。
もう次が来ました。
Googleが2026年8月13日(米国時間)、Gemini 3.7 Flashを公開しています。公式の位置づけは「コーディングやエージェント機能においてこれまでで最も高性能な主力モデル」。そして今回も値段が動きました。しかも、期限つきで。
上がったのはコーディングとエージェント まず数字を見る
公式が出しているベンチマークを並べます。すべて3.6 Flashとの比較です。
| ベンチマーク | 3.7 Flash | 3.6 Flash |
|---|---|---|
| FrontierCode 1.1 Main | 43.6% | 34.4% |
| DeepSWE v1.1 | 65.3% | 約49% |
| WebDev Arena(Elo) | 1588 | 1538 |
| GDP.pdf | 34.0% | 22.0% |
| AutomationBench | 30.4% | 17.0% |
ここに挙げた5項目は、いずれも上がっています。 しかも小幅ではありません。DeepSWE v1.1は約49%から65.3%、AutomationBenchは17.0%から30.4%。3週間でこの動き方は、正直あまり見たことがない幅です。
ただし、正確に書いておきます。Googleが公開している詳細ベンチマーク全体を見ると、3.6 Flashをわずかに下回る項目もあります。 たとえばCharXiv Reasoningは、ツールなしで84.5%(3.6 Flashは85.2%)、ツールありで88.7%(同89.4%)。すべての能力が一律に上がったわけではありません。
名前が並んでいても何の試験か分からないと思うので、実務に引きつけて言うと、上の3つはコードを書く力、下の2つは資料を読む力と作業を自動でこなす力にあたります。Googleが今回強化したと言っているのは、コーディングとエージェントです。
公式の説明では、多段の計画とツール呼び出しにより多くの労力を割くようになった、とあります。ひとことで言えば、指示を受けてから答えを出すまでに、途中の手順をちゃんと踏むようになったということです。
ここは注意して読んでください。ベンチマークが上がったことと、自社の業務で使い物になることは別です。数字は「どの方向に力を入れたか」を読むための材料であって、導入判断の根拠にはなりません。判断材料は自社の実データでの検証だけです。
年内は新旧が同じ特別価格 2027年から標準価格に戻る
今回いちばん実務に効くのは、ここだと考えています。ただし少し込み入っているので、順に見てください。
7月に3.6 Flashが登場したときの価格は、入力$1.50・出力$7.50でした。今回の3.7 Flashは、その半額にあたる入力$0.75・出力$3.75の初回特別価格で出てきています。
ここまでなら「新モデルが半額で出た」で終わりますが、そうではありません。Googleは同じ初回特別価格を、3.6 Flashにも適用しました。 日本語版の発表に脚注として明記されています。
現在のAPI料金はこうなっています。
| モデル | 2026年内(初回特別価格) | 2027年1月1日以降 |
|---|---|---|
| Gemini 3.7 Flash | 入力 $0.75 / 出力 $3.75 | 入力 $1.50 / 出力 $7.50 |
| Gemini 3.6 Flash | 入力 $0.75 / 出力 $3.75 | 入力 $1.50 / 出力 $7.50 |
つまり、年内は3.6と3.7が同額です。「新しいほうが半額」ではなく、新旧どちらも同じ特別価格で試せるという状態になっています。そして特別価格の期限は両モデルとも2026年12月31日まで。
ここから導ける実務的な結論は1つです。2027年からAPIの標準単価は倍になります。 来年から本格導入するにしても、試すのは今年のうちのほうが安い。逆に、いま検証する余裕がないなら、年明けの単価で採算が合うかを先に見ておくべきです。
なお実際にかかる総額は、出力量やキャッシュの効かせ方でも変わります。単価が倍だから請求も倍、と単純には言えません。
トークン課金の考え方そのものが怪しい方は、生成AI用語集のトークンの項を見てから戻ってきてください。
Sparkでも、APIでも、Antigravityでも使える
提供場所を確認します。公式が挙げているのは次のとおりです。
- Gemini アプリ内のSpark(Google AI Pro / Ultra 向け。160以上の国)
- Gemini API / Google AI Studio
- Google Antigravity
- Android Studio
- Gemini Enterprise アプリ / Gemini Enterprise Agent Platform
個人向けの入口は、常駐型エージェントのSpark経由です。Google AI ProかUltraの対象ユーザーなら、Geminiアプリ内のSparkから試せます。通常のGeminiチャットでモデルとして直接選べる、という書き方は今回の発表にはありません。
Sparkについては、Google Workspaceアプリとの連携やツール活用の精度も高まったとGoogleは説明しています。メールや文書を扱う仕事で効いてくる部分です。
一方でAPIの価格が動いたということは、自社サービスの裏側でGeminiを呼んでいる会社にとっては、そのまま原価の話になります。触ってみる話と、原価の話は別々に考えたほうがいいでしょう。
3週間で次が出る前提で、検証のやり方を変える
ここからは実務の話です。
3.6 Flashから3.7 Flashまで、3週間でした。この頻度は、正直しんどい。きちんと検証しようとすると、終わる前に次が出ます。
私たちがAI導入のご支援に入るときも、この相談は増えました。「どのモデルを選べばいいか」と聞かれるのですが、実際に困っているのは選定そのものではなく、選定作業が終わらないことです。
そこで、やり方のほうを変えます。具体的には、こうしています。
- 評価用の課題を10〜20件、先に作って固定する。 自社の実際の業務から取る。新しいモデルが出たら、それを流すだけにする
- 合否の基準を先に決める。 「なんとなく良さそう」で判断しない。何割正解すれば合格か、どこを人が見るのかを決めておく
- モデル名を設定から外す。 呼び出すモデルを1か所で切り替えられるようにしておけば、乗り換えは設定変更で済みます
3つ目が効きます。コードのあちこちにモデル名が散っていると、乗り換えのたびに改修になる。最初に1か所へ寄せておくだけで、次の3週間後が怖くなくなります。
逆に言えば、この準備がないまま毎回ゼロから比較していると、いつまでも検証だけで終わります。追いかけるのをやめて、測る仕組みを持つほうが早い、というのが私たちの結論です。
上位モデルより先に、主力モデルを疑う
7月の記事で「上位モデル信仰を一度疑ってみる」と書きました。今回、その傾向がさらに強まっています。
Googleは3.7 Flashを「主力モデル」と呼んでいます。最上位ではなく、日常業務を回すための働き手という位置づけです。そこにコーディングとエージェントの強化を集中させてきた。
中小企業の実務で使うモデルは、ほとんどの場合こちら側です。議事録の要約、メールの下書き、資料の整理、データの抽出。 最上位モデルの推論力が必要な場面は、思っているより多くありません。
自社がいまどの段階にいるのか分からない方は、AI活用レベルの見取り図を先に見てください。レベルによって、モデル選定が問題になる段階かどうかが変わります。 そもそも使い道が固まっていないなら、モデルを比べるより先にやることがあります。
まとめ 安いのは今年まで、と考えて動く
要点を並べます。
- Googleが2026年8月13日にGemini 3.7 Flashを公開。3.6 Flashから3週間での更新
- 強化されたのはコーディングとエージェント。ただし詳細ベンチマークでは3.6 Flashを下回る項目もあり、一律に上がったわけではない
- 初回特別価格は入力$0.75・出力$3.75。同じ価格が3.6 Flashにも適用され、年内は新旧が同額
- 特別価格は両モデルとも2026年12月31日まで。2027年1月1日から$1.50・$7.50の標準価格に戻る
- 個人向けの入口はGeminiアプリ内のSpark。ほかにAPI、AI Studio、Antigravity、Android Studio、Gemini Enterprise
- ベンチマークの数字は方向性を読む材料であって、導入判断の根拠にはならない
やることは2つに絞れます。年内に自社データで試すことと、次の更新に備えて測る仕組みを持っておくことです。
すぐ動くなら、いま手作業でやっている仕事を1つ選んで、実際のデータで3.7 Flashに投げてみるところから。3週間後にまた新しいモデルが出ても、同じ課題を流すだけで比較できる状態を作っておけば、追いかけ続けなくて済みます。